今回は、何らかの原因で奥歯を失ってしまった方の治療方法についてご紹介していきたいと思います。
皆さんは「歯を失ってしまった場合の治療方法」と聞くと、どのようなものをイメージするでしょうか?一度失ってしまった永久歯に関しては、二度と生えてくることがありませんので、人工的に作った義歯を治療として入れることになります。しかし、歯を失ってしまった場合の治療方法には、いくつかの種類が存在しており、「入れ歯」や「ブリッジ」「インプラント」などの選択肢の中から最適な治療方法を選ばなければいけないのです。最近では、歯を失った時の治療方法としてインプラントの人気が高くなっていると言われていますが、大掛かりな手術が必要になる治療となりますので、全身疾患や投薬状況さらには口中の歯や顎の状態によってはオススメできない場合も少なくないのです。
そこで今回は、高齢化の進む日本で、できるだけ体に負担をかけずに『歯の欠損』を治療するためには?ということについて考えてみたいと思います。
歯の欠損を放置してはいけない
一般的にですが、歯は上下合わせて28本(親知らずは除きます)の歯が規則正しく並んで噛みあっているものです。しかし、何らかの原因で歯が抜け落ちてしまい、その状態を放置してしまうと歯を失ったことによってできるスペースに両隣や対顎の歯が移動してきてしまうのです。
このような状態になると、噛み合わせや歯並びのバランスが崩れてしまい、残った周辺の歯のお手入れが非常に難しくなってしまいます。そして、お手入れ不足に陥った歯は、虫歯や歯周病になりやすく、残っている歯まで寿命が短くなってしまう可能性があるのです。
こういった口内の問題を解決するために、歯が抜け落ちてしまった場所は、そのまま放置するのではなく、入れ歯、ブリッジまたはインプラントなどで治療が必要不可欠と言われているのです。
歯の欠損を放置したら何が起こる?
『噛む力』というのは、大臼歯を1本失っただけでも低下してしまいます。
例えば、下顎の奥歯が1本抜け落ちてしまったとして、それをそのまま放置してしまうと何が起こるのでしょうか?
このような状態を招いてしまった場合には、対顎の歯や両隣の歯が徐々に移動してしまい、歯並びが乱れてくるのです。そして、歯が移動してしまった事により、歯と歯の間には隙間が生じてしまい、食事のたびにそこへ食べかすなどが挟まりやすくなるのです。このような状態になってしまうと、食事のたびに不快な思いをすることになるだけでなく、虫歯になりやすくなったり歯周病の原因になってしまいます。そして最終的には、欠損した部分の両隣の歯が徐々に傾いてしまい、歯の清掃が上手くいかなくなることによって歯周ポケットが形成され、口内の細菌の繁殖が盛んになってしまうなど、さまざまな問題を引き起こしてしまう訳です。
歯の欠損にも種類がある
何らかの理由で歯を失ってしまう場合でも、人により抜けてしまう場所は当然異なります。このような歯の欠損は、その欠損状態によっていくつかのパターンに分類されています。歯の欠損状態による分類については、「奥歯を失ったときの治療について。両側性遊離端欠損の場合」でご紹介していますので、こちらもぜひご参照ください。
例えば、この分類の中には『ケネディII級』と呼ばれる分類があります。これは、「片側性遊離破端欠損」と呼ばれる欠損状態で、片側の奥歯3本が欠損してしまい、現存する歯の後方に片側性の欠損が存在する状態を指しています。それではこのような欠損状態の場合はどのような治療方法が適していると言えるのでしょうか?
上述したように、歯を失った部分の治療を行うには、入れ歯、ブリッジ、インプラントの3つの種類が存在します。近年では、歯を失った部分に歯を入れる場合の治療方法として『インプラント』が1番手のように扱われることが増えています。しかし、インプラントによる治療は、手術が必要となりますので体への負担を考えるとオススメできない場合もあるのです。特に高齢化が進んでいる日本では、高齢者の方に治療を行う場合、何らかの疾患や投薬状況によっては、インプラント手術が体に大きな負担を与えてしまう危険もありますし、顎の状態によってはそもそもインプラントができない…なんてことも考えられるのです。
そこで、こういった歯の欠損の治療を行う場合、できるだけ体に負担をかけたくない…と考えている方は、入れ歯による治療がオススメです。入れ歯による治療は、インプラントのように治療が長引くこともありませんし、手術などが無く高齢者の方も安心して治療を受けることができるのです。
『入れ歯』のメリットとデメリット
それでは最後に、歯を失った場合に入れ歯による治療を選択した時、どのようなメリットとデメリットがあるのかについて簡単にご紹介しておきましょう。歯の欠損を治療する3つの手法には、それぞれにメリット・デメリットが存在していますので、治療を進める前にきちんと押さえておく必要があるでしょう。
『入れ歯』のメリット
まずは『入れ歯』による治療のメリットからです。
- 残っている歯を削らなくて良い
入れ歯による治療は、歯に針金(クラスプ)をかけて維持させますので、歯が傾いていて針金がかけられない…など、特別な場合を除いて、健康な歯を削らなくても良いのが大きなメリットです。 - 短時間で治療が終わる
特別な理由がない限り、口の型取りを行うだけで入れ歯を入れることができ、治療期間が短いというメリットがあります。 - 保険が適用が可能
一部の入れ歯を除いて、保険適用で治療が可能です。 - 安全性が高い
手術が必要なインプラントと比較すると、体への負担もありませんし、非常に安全性の高い治療となります。
『入れ歯』のデメリット
次は『入れ歯』による治療のデメリットです。
- 安定性に欠ける場合がある
入れ歯はガタガタしやすく、安定性に欠けるのがデメリットと言われます。特に小さい入れ歯は、容易に外れる場合があり、高齢者の方が誤飲してしまう危険があると言われます。 - 噛む力が弱くなる
入れ歯は、歯ぐきや他の歯にかけたバネで人工歯を支えます。そのため、天然の歯と比較すると噛む力が大きく低下してしまうのです。 - 装着後の調整が長引くことがある
入れ歯による治療は基本速いです。しかし、装着後に傷みがある…など、装着後の調整に長い時間がかかる場合があります。 - 耐久性に欠ける
金属疲労でバーやクラスプなどが折れてしまう可能性があります。 - 入れ歯が目立つ場合がある
治療場所によっては、前歯部分にバーがかかるなど、入れ歯が目立ってしまうことがあります。インプラントと比較した場合、見た目的には劣るのがデメリットです。 - 味覚が鈍くなる
入れ歯は味を感じにくくなると言われています。また、大きな入れ歯の場合は、発音、咀嚼、嚥下などその他の口の機能に支障が出てしまう場合があります。 - お手入れが面倒
入れ歯は歯磨きだけでは清潔に保てませんので、インプラントなどよりもお手入れに手間がかかります。清潔不良に陥ってしまうと、健康な歯の虫歯の原因になりますし、歯周病リスクも高くなってしまいます。
まとめ
今回は、歯を失ってしまった場合に、それを放置してしまった時のリスクや、体に負担をかけないように治療するにはどういった治療方法がオススメなのかをご紹介しました。歯の欠損の治療方法として、インプラント治療が注目されている現在ですが、全ての人にインプラントが適しているわけではないのです。特に、何らかの疾患や投薬治療を行っている可能性が高い高齢者の方であれば、手術が必要なインプラントは体への負担が大きすぎて、逆にオススメできない…場合もあるのです。
高齢化が進む日本では、治療の際の負担が少ない『入れ歯』による治療が今後重要な立場を担うことになると思います。