はじめに
みなさん、こんにちは。
現在入れ歯を使用されている方で、その入れ歯に満足していないという方が結構いらっしゃると思います。今回は、特に、
- 今使っている入れ歯だとしっかり噛めない
- 今使っている入れ歯がちょくちょくひび割れなど壊れやすい
- 今使っている入れ歯に厚みがあり、違和感が強い
このようなお悩みをお持ちの方に、「金属床義歯」という入れ歯をご紹介したいと思います。
今、入れ歯をお使いの方は、事故やケガ、虫歯などの理由でご自分の歯を失うこととなり、その失った歯の代わりとして入れ歯をご使用になっていると思います。
歯と入れ歯について
入れ歯をご使用になっていらっしゃると余計に感じやすいと思うのですが、「歯」は物を噛むための道具であるとみなされがちです。しかし、実際は、歯は単なる道具というわけではありません。歯には神経も通っていますし、血管もまた通っているのです。歯は、体の一部であり、器官なのです。
そのため、その歯を失うということは、体のひとつの器官を失うということになり、体全体にも悪影響を及ぼすこととなります。例えば、失った歯をそのままの状態にしておくと、かみ合わせが悪くなり、そのかみ合わせを補うために、失った歯の周辺の歯が、失った歯の部分に近づいて動いてくるのです。そうすると、見た目が悪くなることはもちろんのこと、間に食べ物が挟まりやすくなり、虫歯や歯周病になりやすくなります。そして、歯周病は全身疾患へとつながっているので、結果として体全体が病気になることへとつながってしまうのです。
また、食べ物を食べるときに咀嚼することは、栄養をしっかりと摂るということはもちろんのこと、脳へと血液を送るポンプの役割もあるため、認知症の予防という効果があるのですが、歯を失ったままにしておくことによって、それらのことに対しても支障をきたしてしまうことになるのです。
これらのことからも、歯が、体にとっていかに大事であるかがお分かりいただけると思います。
そこで、ご自分の歯を失ってしまった場合には、その歯の代わりとして入れ歯を使うことになるのです。
最初に入れ歯を作るときは、健康保険の適用される入れ歯を作る方がほとんどだと思います。その保険適用の入れ歯でも問題なく生活されている方はいらっしゃいますので、保険の入れ歯がすべて悪いとは言いません。しかし、やはり失った自分の歯とは全く異なる人工物を口の中に入れて使用するということになりますので、少なからず上にあげたようなお悩みが出てきてしまうのです。
入れ歯のお悩み
中でも、今使っている入れ歯だとしっかり噛めないというお悩みは、やはりとても重大なお悩みだと思います。歯を失ったので、しっかりと噛んで食事をするために入れ歯を作ったのにもかかわらず、しっかり噛めない。これでは入れ歯の役割のほとんどを果たしていないと言えます。入れ歯を使わないとならないということになったとしても、しっかりと噛んで食事をし、きちんと、自分の歯で食事をしていたときと同じように栄養を摂りたいですよね。
また、今使っている入れ歯がちょくちょくひび割れなど壊れやすいというのも大きな悩みだと思います。せっかく作った入れ歯が壊れてばかりだと、保険の範囲内とはいっても、費用がかさんできてしまいますし、何度も歯医者に足を運ばないとならなくなるので、その時間を取るのも大変ですよね。そのような方は、一度作ったらなかなか壊れない入れ歯を望まれるのではないでしょうか。
そして、今使っている入れ歯に厚みがあり、違和感が強いという方は、結構多いと思います。入れ歯の性質上、今まで何も入っていなかった口の中に人工物が入ることになるので、ある程度は仕方のないことではありますが、少しでも違和感がない状態で入れ歯を装着したいと思われるのは、普通の感情だと思います。
金属床義歯の紹介
さて、それらのお悩みを解決することができるのが、今回ご紹介いたします「金属床義歯」という入れ歯です。
保険の適用される入れ歯と金属床義歯の違いを簡単にいうと、保険の入れ歯は、歯ぐきに触れる部分である「床」がプラスチックで作られているのに対して、金属床義歯は、その「床」が金属で作られているということです。
普通の入れ歯と金属床義歯を比較する表と図
保険適用の普通の入れ歯 | 金属床義歯 | |
形態 | 強度保持のために、約1.5㎜の厚みが必要。 | 床部分に金属を使用するため、薄い。(コバルトクロムの場合、約0.4㎜。) |
精度 | プラスチックのため、たわみ、変形が起こりやすく、壊れやすい。
修理は比較的簡単にできる。 |
精度、吸着性がともに良い。
丈夫で壊れにくく、たわみ、変形が極めて少ない。 |
審美性 | 部分入れ歯では、金属製のバネが目立つ。 | 部分入れ歯でも、バネが目立たないように作成することができる。 |
発音 | 入れ歯の付属物に舌の動きが邪魔されて、上手に話ができるようになるまで時間がかかる。 | 床部分を薄く作るため、入れ歯に舌の動きが邪魔されにくく発音しやすい。 |
味覚 | プラスチックで覆われる部分が多いため、食べ物の温度が伝わりにくく、食品本来の味が分かりにくくなる。 | 食べ物の温度が伝わりやすく、食品本来の味に近い味を感じることができる。 |
臭い | 臭いや汚れが付きやすい。 | 臭いが少なく衛生的。 |
価格 | 安い。 | 高い。 |
金属床義歯の特長
- 材料が軽い:保険適用の入れ歯は、材料がプラスチックのため重く、噛む動作に負担を与えますが、金属床義歯で使用する材料は、保険適用の入れ歯の1/4くらいの重さなので、噛むときの負担が少ない。
- 材料が薄い:保険適用の入れ歯は、材料がプラスチックのため厚く、装着に強い違和感が伴いますが、金属床義歯の材料は保険適用の入れ歯の1/4ほどの薄さのため、違和感が少ない。
- 温度が伝わりやすい:保険適用の入れ歯の場合、食べ物の温かさや冷たさが伝わりにくいですが、金属床義歯では温度が伝わりやすいため、食事を美味しく感じることができます。
- 残っている歯に負担をかけない:保険適用の入れ歯は、咀嚼の際にたわむため、入れ歯を引っ掛けている歯に過度な力が加わることによってその歯を痛めますが、金属床義歯にはたわみがほとんどないため、引っ掛けている歯にも負担をかけません。
- 緻密な調整ができる:金属床義歯は、自分のあごの高さに合った緻密な調整ができるため、自分に最適な入れ歯を作ることができます。
金属床義歯の利点と欠点
利点
- 床が薄く入れ歯を入れている違和感が少ない
- とても丈夫で耐久性に優れている
- 保険適用の入れ歯よりも、軽く薄く作ることができる
- 金属なので、プラスチックよりも熱伝導性に優れており、食べ物の温かさや冷たさを感じることができるため、より美味しく食事ができる
- 汚れ、臭いが付きにくく清潔
- プラスチックよりも金属のほうが細かく調整できるため、よりぴったりする入れ歯を作ることができる
欠点
- 金属という性質上、壊れた場合の補修は困難
- 金属のため、調整や修理に時間がかかることがある
- 使用する金属によっては、金属アレルギーを引き起こすことがある(※)
- 保険が適用されないため、価格が高い
(※)金属床義歯で使用する材料は、主に生体親和性のある体にやさしくなじみやすい金属です。
金属床義歯の種類
ひとことに「金属床義歯」といっても、種類があります。その種類をみていくことにしましょう。
金床義歯
金は腐食に強く、身体にも優しい金属です。比較的柔らかい金属なので、精密加工がしやすいというメリットもあります。
熱伝導に優れているため、温かい、冷たいということを感じることができ、美味しく食事ができます。
とても薄く作ることができるので、口の中での違和感はほとんどありません。
コバルトクロム床義歯
金属床義歯として最も長く使われてきた素材です。コバルトとクロムの合金で、金よりも安く、生体親和性に優れています。
熱伝導にも優れています。
チタン床義歯
チタンは腐敗せず、軽く、丈夫で汚れにくいです。人体にやさしく、生体親和性に優れているため、金属アレルギーの心配がほとんどありません。
イオンコーティング加工により、プラークの付きにくい状態をつくり、色も上品な仕上がりにすることも可能です。
とても軽いので、上あごの入れ歯に向いています。
トルティッシュ義歯
トルティッシュ義歯に使われる金属は、「多孔質金属メッシュプレート」と呼ばれるものです。この多孔質金属メッシュプレートには、2~10ミクロン以下の目に見えないとても小さな孔が何万個も開いています。このため、水分を通すことができます。
味覚を感じるのは、「味らい」と呼ばれる小さな感覚器官で、これは、舌や上あごに分布しています。このため、他の入れ歯を装着すると、入れ歯によって上あごが覆われるので、上あごに分布する味らいで味を感じることができなくなります。これに対して、トルティッシュ義歯は、上あごが覆われても水分を通すので、それと同時に食べ物の旨味などの成分や温度も通し、美味しく食事をすることができます。
むすび
今回は、
- 今使っている入れ歯だとしっかり嚙めない
- 今使っている入れ歯がちょくちょくひび割れなど壊れやすい
- 今使っている入れ歯に厚みがあり、違和感が強い
このようなお悩みをお抱えの方に対して、そのお悩みを解消することのできる、「金属床義歯」という入れ歯のご紹介でした。もしこのようなお悩みをお抱えの方がいらっしゃいましたら、どうぞご遠慮なく当医院までご相談いただければと思います。皆様の入れ歯ライフを快適なものとするお手伝いをすることができれば幸いです。